「月夜のタヌキ」プロジェクト

物語のいでき始めのおや 〜月夜野アーカイブ〜

「物語のいでき始めのおや」とは、竹取物語のことを指した源氏物語のなかにあることばです。私たちは、「月(ツキ)」と「運」だけで勝負できるこのまち月夜野に、たくさんの物語を育てていきます。2016年、月夜野が日本百名月に登録されたことを機に、みなかみ〈月〉の会を結成しました。

2016年10月

「月夜のこころ百景」に加えたい絶妙の唄を見つけました。





秋は嬉しや 二人転んで月見の窓

色々話しを菊の花

鹿とわからぬ主が胸

チョイと私は気を紅葉(もみじ)
 

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素晴らしい唄です。

「四季の唄」または「ヒヤヒヤ節」とも呼ばれる明治時代の座敷唄。

冒頭の唄は四季のうち三番目の秋。

「月夜のこころ百景」には入っていませんが、行燈には加えました。

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この秋の三番がひと際秀逸ですが、一番から全詩を以下転記します。 



春は嬉しや 二人転んで花見の酒
庭の桜に朧月
それを邪魔する雨風が
チョイと散らして又咲かす

夏は嬉しや 二人転んで涼みの船
風がりんきで簾垂捲く
恋の瀬川に竿立たず
チョイと浮名が流れ行く 

秋は嬉しや 二人転んで月見の窓
色々話しを菊の花
鹿とわからぬ主が胸
チョイと私は気を紅葉(もみじ) 

冬は嬉しや 二人転んで雪見の酒
障子明くれば銀世界
話しが積もれば雪もつむ
チョイと解けます炬燵中

春の花見は 小室嵐山祗園の桜
夏は疎水の涼み船
秋の紅葉は永観堂
冬は丸山雪見酒


『近代はやり唄集』岩波文庫より


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今年は9月からずっと曇り続きの天気だったので、
紅葉の色づきがおそらく悪いのではないかと思い、

ずっと私は気を紅葉(もみじ)





 

かつて月夜野という地名が、様々な月にまつわる各地の地名のなかでも
いかに魅力的な名前であるかということを

「地名とは地霊の名刺ですからね(谷川顔)」
http://blog.goo.ne.jp/hosinoue/e/3b9491ec988adbabcc32002d15347be 
にて書きました。

ところが、ここだけはさすがのわが月夜野も負けを認めざるをえない地名がありました。

その地名は、

「月」です。



ただ「月」だけの地名があることを知りませんでした。


したがって、その土地へ近づくと、道路標識には、

「月  3km 」といった感じで、月までの距離が表示されているのです。




月まであと3km。

日本にいながら月旅行できちゃう場所があった!?

http://find-travel.jp/article/47196

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どうしてこのようなただ「月」とだけの地名になったのか。

なかなか由縁も面白そうです。

これは、行って確認して来なければいけません。

 
 

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近江の大津の宮に天の下知らしめす天皇の代天命開別天皇、諡して天智天皇といふ

天皇内大臣藤原朝臣に詔して、春山の万花の艶と秋山の千葉の彩と競ひ憐れ日しめたまふ時に、額田王が歌を持ちて判る歌


 
冬ごもり 春去り来れば 鳴かざりし 鳥も来鳴きぬ 咲かざりし 花も咲けれど

山を茂み 入りても取らず 草深み 取りても見ず 秋山の 木の葉を見ては

黄葉をば 取りてそしのふ 青きをば 置ききてそ嘆く そこし恨めし 秋山われは

                       額田王 万葉集 巻1ー16 





天智天皇が藤原鎌足に命じて、春山の花と秋山のもみじのどちらが良いか競わせた時の額田王の歌。

冬ごもりしていたが、春がくると、今まで鳴かなかった鳥も鳴き、咲かなかった花も咲く。
しかし、山は茂っているので入ることはできないし、草が深いので取ることもできない。
秋山の木の葉を見て、色づいた黄葉を取ってしのぶ。(春の)青い葉は置いて嘆いてる。 
恨めしいことに私は秋山なのだから
 


 輝かしい春山の大海人皇子に私がとりつく余地はありません。
結局、私は秋山、つまり天智天皇の一族なのですから

という意味にもとれる歌です。

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天智天皇が秋、天武天皇が春

この対比は、額田王からみたときだけの話ではなく、

天皇の歴史の中で、天武系、天智系の対立は、その後も一貫して流れていくものです。

これから、このブログでもずっと関わるポイントにもなります。

天智系 = 藤原系 ⇨ 太陽(アマテラス)重視

天武系 = 反藤原系 ⇨ 月(ツクヨミ)、または日月偏ることのない「天円地方」の思想




 
小野小町のような美貌で人気を得たタイプではなく、
いわゆる「いい女」としての魅力溢れる女性としては、
おそらく和泉式部と、この額田王に勝る女性は思い浮かびません。

と言っても、遠いところから眺めるだけの憧れですけどね。

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生方たつゑ 『額田王』 読売新聞社
黒岩重吾『茜に燃ゆ』 上・下  中公文庫
藤村由佳 『額田王の暗号』 新潮文庫 

 

かれこれ1ヶ月以上、すっきりと晴れた日はなかったように思えますが、
今日はほんとに久しぶりに月が煌々と照っています。

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昨日の「後の十三夜」も見そびれただけに、本当に美しく見えます。

写真は撮れませんでしたが、宵の明星も山の綺麗なシルエットの上に輝いていました。


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明日の十五夜も、天気予報では見れそうです。

 

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