「月夜のタヌキ」プロジェクト

物語のいでき始めのおや 〜月夜野アーカイブ〜

「物語のいでき始めのおや」とは、竹取物語のことを指した源氏物語のなかにあることばです。私たちは、「月(ツキ)」と「運」だけで勝負できるこのまち月夜野に、たくさんの物語を育てていきます。2016年、月夜野が日本百名月に登録されたことを機に、みなかみ〈月〉の会を結成しました。

2016年04月

こころの月百景


西行法師(3)「御裳濯河歌合」ほか
出典
201朝日にや結ぶ氷の苦は溶けむ 六の輪を聞くあか月の空聞書集  224
202軍(いくさ)を照らす弓張の月聞書集  228
203さぞな君心の月を磨くには かつがつ四方に雪ぞ敷きける聞書集  234
204月は都花のにほひは越の山と思ふよ雁の行き帰りつつ聞書集  241
205今宵こそ心のくまは知られぬれ入らで明けぬる月をながめて残集  13
206憂き世にはほかなかりけり秋の月 ながむるままに物ぞかなしき残集  27
207山の端に出づるも入るも秋の月 うれしくつらき人の心か残集  28
208いかなれば空なる影はひとつにてよろづの水に月宿るらん残集  29
209さ夜ふけて月にかはづの声聞けば汀(みぎは)もすずし池の浮草残集  31
210神路山月さやかなる誓ひありて天の下をばてらすなりけり御裳濯河歌合 2
211さやかなる鷲の高嶺の雲居より 影和らぐる月読の杜御裳濯河歌合 4
212秋はただ今夜一夜の名也けり おなじ雲井に月は澄めども御裳濯河歌合 6
213秋になれば雲井の影のさかゆるは 月の桂に枝やさすらん御裳濯河歌合 8
214身にしめてあわれ知らする風よりも 月にぞ秋の色は見えける御裳濯河歌合 10
215憂き身こそ厭ひながらも哀なれ 月をながめて年の経にける御裳濯河歌合 12
216願はくは花のもとにて春死なむその二月(きさらぎ)の望月のころ御裳濯河歌合 13
217来む世には心のうちにあらはさむ 飽かでやみぬる月の光ぞ御裳濯河歌合 14
218更けにける我世の影を思ふまに 遥かに月の傾きにける御裳濯河歌合 16
219月を待つ高嶺の雲は晴にけり 心あるべき初しぐれかな御裳濯河歌合 18
220ふりさけし人の心ぞ知られける 今夜三笠の月をながめて御裳濯河歌合 20
221山里の月待つ秋の夕ぐれは 門田の風の音のみぞする御裳濯河歌合 38
222長月の月の光の影深(ふけ)て 裾野の原にを鹿鳴也御裳濯河歌合 39
223月見ばと契おきして古郷の 人もや今宵袖濡すらん御裳濯河歌合 40
224霜さゆる庭の木の葉を踏み分て 月は見るやと訪(と)ふ人もがな御裳濯河歌合 40
225嘆けとて月やは物を思はする かこちがほなる我涙かな御裳濯河歌合 55
226知らざりき雲居のよそに見し月の影を袂に宿すべしとは御裳濯河歌合 56
227鷲の山思やるこそ遠けれど 心にすむぞ有明の月御裳濯河歌合 65
228現はさぬわが心をぞ恨むべき 月やはうとき姨捨の山御裳濯河歌合 66
229数へねど今夜の月のけしきにて 秋の半を空に知る哉宮河歌合 21
230月の澄む浅茅(あさぢ)にすだくきりぎりす露の置くにや夜を知るらん宮河歌合 22
231月澄みて深る千鳥の声す也 心くだくや須磨の関守宮河歌合 24
232山陰にすまぬ心は何なれや 惜しまれて入月もある世に宮河歌合 25
233いづくとてあはれならずはなけれども 荒れたる宿ぞ月はさびしき宮河歌合 26
234月の色に心を深く染めましや 宮こを出ぬ我身なりせば宮河歌合 27
235わたの原波にも月は隠れけり 都の山を何いとひけん宮河歌合 28
236世中の憂きをも知らですむ月の影はわが身の心地こそすれ宮河歌合 29
237隠れなく藻にすむ虫は見ゆれども 我から曇る秋の夜の月宮河歌合 30
238憂世にはほかなかりけり秋の月 ながむるあまに物ぞかなしき宮河歌合 31
239捨つとならば憂き世を厭ふしるしあらん われ見ば曇れ秋の夜の月宮河歌合 32
240小倉山ふもとの里に木葉散れば梢に晴るる月を見るかな宮河歌合 48
241憂き世とて月すまずなる事もあらばいかがはすべき天の下人宮河歌合 65
242ながらへて誰かはさらにすみとげむ月隠れにし憂き世なりけり宮河歌合 66
243春秋を君思ひ出でば我は又花と月とにながめおこせん宮河歌合 74
244月澄みてなぎたる海の面かな 雲の波さへ立もかからで六家集板本山家和歌集 8
245うれしきは君に逢ふべき契りありて月に心のさそはれにけり六家集板本山家和歌集 9
246月出る軒にもあらぬ山の端のしらむもしるし夜はの白雪六家集板本山家和歌集 13
247汲みてこそ心澄むらめ賤の女がいただく水に宿る月影六家集板本山家和歌集 21
248ふけて出る深山も峰の明星は月待えたる心地こそすれ六家集板本山家和歌集 22
249おなじ月の来寄する浪にゆられ来て 美保が崎にも宿るなりけり拾遺 松屋本山家集 24
250千鳥鳴くをりたる崎をめぐる舟の月を心にかけて過ぐらん拾遺 松屋本山家集 25
251湛へおく心の水にすむ月を明石の波に映してぞ見る拾遺 松屋本山家集 26
252今宵しも天の岩戸を出づるより影くまもなく見ゆる月かな拾遺 松屋本山家集 27
253山の端に出でつる月を見つるかな何事をかはいひくらぶべき拾遺 松屋本山家集 28
254思ひ分く心なかりし昔だに月をあわれと見てぞ過こし拾遺 松屋本山家集 29
255おしこめて秋の野照らす月影は花なる露を玉にみがける拾遺 松屋本山家集 30
256聞くたびにいつも初音と思ひけん心に我は月を見る哉拾遺 松屋本山家集 31
257雲さえて里ごとにしく秋の氷は月の光なりけり拾遺 松屋本山家集 32
258山陰に住まぬ心のいかなれや惜しまれて入月もある世に拾遺 西行法師家集 52
259いかにぞや残り多かる心地して雲にはづるる秋の夜の月拾遺 西行法師家集 53
260月見ばと契置てし古郷の人もや今宵袖濡らすらん拾遺 西行法師家集 54
261月のためうしろやすきは雲なれや 憂き世にすめる影を隠せば拾遺 西行法師家集 55
262侘人の住む山里の咎ならん 雲らじものを秋の夜の月拾遺 西行法師家集 56
263憂き身こそいとひながらも哀なれ月を詠て年の経にける拾遺 西行法師家集 57
264世の憂さに一方ならずうかれ行心定めよ秋の夜の月拾遺 西行法師家集 58
265捨つとならば浮世をいとふしるしあらん われ見ば曇れ秋の夜の月拾遺 西行法師家集 59
266いにしへの形見に月ぞなれとなるさらでの事は有はあるかは拾遺 西行法師家集 60
267詠つつ月に心ぞ老にけるいま幾程か世をもすさめむ拾遺 西行法師家集 61
268山里を訪へかし人に哀見せむ露敷く庭に澄める月影拾遺 西行法師家集 62
269われなれや松の梢に月たけて緑の色に霜降りにける拾遺 西行法師家集 63
270三笠山月さしのぼる影さえて鹿鳴きそむる春日野の原拾遺 西行法師家集 64
271かねてより心ぞいとど澄みのぼる月待つ嶺のさを鹿の声拾遺 西行法師家集 65
272月を待つ高嶺の雲は晴にけり 心あるべき初しぐれ哉拾遺 西行法師家集 72
273さびしさは秋見し空にかはりけり 枯野を照らす有明の月拾遺 西行法師家集 76
274小倉山ふもとの里に木の葉散れば梢に晴るる月を見るかな拾遺 西行法師家集 77
275真木の屋のしぐれの音を聞く袖に月の漏りきて宿りぬるかな拾遺 西行法師家集 78
276今日や君おほふ五の雲晴れて心の月をみがき出らん拾遺 西行法師家集 92
277雲の上や古き都に成にける澄むらむ月の影はからで拾遺 西行法師家集 103
278これや見し昔住みけむ宿ならむ蓬が露に月の宿れる拾遺 西行法師家集 105
279月すみし宿も昔の宿ならで我身もあらぬわが身成けり拾遺 西行法師家集 106
280めぐり逢はで雲のよそにはなりぬとも月に馴行むつび忘な拾遺 西行法師家集 108
281来ん世には心のうちに現さんあかでやみぬる月の光を拾遺 西行法師家集 123
282現はさぬわが心をぞ恨むべき月やはうとき姨捨の山拾遺 西行法師家集 124
283憂き世いとふ山の奥へも慕ひきて月ぞ住みかのあはれをば知る拾遺 西行法師家集 128
284見ればげに心もそれになりぞ行枯野のすすき有明の月拾遺 西行法師家集 130
285月のゆく山に心を送り入れて闇なるあとの身をいかにせん撰集・家集・古筆断簡・懐紙 8
286いとどいかに山を出でじと思ふらん心の月をひとり澄まして撰集・家集・古筆断簡・懐紙 14
287憂き身こそ猶山陰に沈めども心に浮かぶ月を見せばや撰集・家集・古筆断簡・懐紙 15
288鷲の山曇る心のなかりせばたれも見るべき有明の月撰集・家集・古筆断簡・懐紙 17
289昔思ふ心ありてぞながめつる隅田河原の有明の月撰集・家集・古筆断簡・懐紙 28
290よそふなる月の御顔を宿す池に所をえても咲く蓮かな撰集・家集・古筆断簡・懐紙 35
291おしなべてなびく尾花の穂なりけり月の出でつる峰の白雲撰集・家集・古筆断簡・懐紙 37
292こさ吹かば曇りもぞする道のくの蝦夷には見せじ秋の夜の月撰集・家集・古筆断簡・懐紙 38
293浪に敷く月の光を高砂の尾上の峰の空よりぞ見る撰集・家集・古筆断簡・懐紙 43
294宵の間に木の間洩りこし月影をいつ有明の空とながめん撰集・家集・古筆断簡・懐紙 56
295都出でて山路の雲に君住まば影を並べん秋の夜の月撰集・家集・古筆断簡・懐紙 57
296放たれて藻なく浮きぬるいろくずの数見ゆばかり澄める月かな撰集・家集・古筆断簡・懐紙 71
297久方の月の都の打橋も立ち隠るべき隈はあらじな撰集・家集・古筆断簡・懐紙 72

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こころの月百景

西行の月の歌、多いとは思いながらも、これほどとは想像つきませんでした。
また、その世界、密度の濃さに加え分かりやすさも破格。
200首まで拾い出してまだ道半ば。

空海や良寛に匹敵する、とてつもない水脈にぶつかってしまいました。

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101あらし越す峰の木の間を分来つつ 谷の清水に宿る月影山家集 中 雑 946
102濁るべき岩井の水にあらねども 汲まば宿れる月やさわがん山家集 中 雑 947
103ひとり住む庵に月のさし来ずは 何か山辺の友にならまし山家集 中 雑 948
104尋(たずね)来て言問ふ人のなき宿に 木の間の月の影ぞさし来る山家集 中 雑 949
105柴の庵は住み憂きこともあらましを 友なふ月の影なかりせば山家集 中 雑 950
106影消えて端山の月は洩りも来ず 谷は梢の雲と見えつつ山家集 中 雑 951
107雲にただ今宵の月を任せてん いとふとしても晴れぬ物ゆえ山家集 中 雑 952
108月を見るほかもさこそは厭ふらめ 雲ただここの空にやだよへ山家集 中 雑 953
109晴れ間なく雲こそ空に満ちにけれ 月見ることは思ひ絶えなん山家集 中 雑 954
110濡るれども雨洩る宿のうれしきは 入りこん月を思ふなりけり山家集 中 雑 955
111澪淀む天の川岸波立たで月をば見るやさへさみの神山家集 中 雑 968
112光をば曇らぬ月ぞみがきける 稲葉にかかる朝日子の玉山家集 中 雑 969
113わづらはで月には夜も通ひけり 隣へ伝ふあぜの細道山家集 中 雑 980
114おなじくは月の折咲け山ざくら 花見る夜はの絶え間あらせじ山家集 中 雑 996
115月のため水錆すえじと思ひしに 緑にも敷く池の浮草山家集 中 雑 1021
116この世にてながめられぬる月なれば 迷はん闇も照らさざらめや山家集 中 雑 1041
117秋風のことに身にしむ今宵かな月さへ澄める庭のけしきに山家集 下 雑 1042
118君いなば月待つとてもながめやらん 東の方の夕暮の空山家集 下 雑 1046
119月見れば風に桜の枝なえて 花よと告ぐる心地こそすれ山家集 下 雑 1069
120庭よりは鷺居る松の梢にぞ 雪はつもれる夏の夜の月山家集 下 雑 1076
121山の端に月澄むまじと知られにき 心の空になると見しより山家集 下 雑 1085
122都にも旅なる月の影をこそ おなじ雲井の空に見るらめ山家集 下 雑 1094
123わたの原はるかに波を隔て来て 都に出でし月を見るかな山家集 下 雑 1101
124わたの原波にも月は隠れけり 都の山を何いとひけん山家集 下 雑 1102
125深き山に澄みける月を見ざりせば 思出もなき我身ならまし山家集 下 雑 1104
126峰の上もおなじ月こそ照らすらめ 所がらなるあはれなるべし山家集 下 雑 1105
127月澄めば谷にぞ雲は沈むめる 峰吹はらふ風にしかれて山家集 下 雑 1106
128姨捨は信濃ならねどいづくにも 月澄む峰の名にこそ有けれ山家集 下 雑 1107
129いかにして梢の隙をもとめえて小池に今宵月の澄むらん山家集 下 雑 1108
130庵さす草の枕に友なひて 笹の露にも宿る月かな山家集 下 雑 1109
131梢洩る月もあはれを思ふべし 光に具して露のこぼるる山家集 下 雑 1110
132神無月しぐれ晴るれば東屋の 峰にぞ月はむねと澄みける山家集 下 雑 1111
133神無月谷にぞ雲はしぐるめる 月澄む峰は秋に変らで山家集 下 雑 1112
134神無月月しぐれふるやに澄む月は 曇らぬ影も頼まれぬ哉山家集 下 雑 1113
135白河の関屋を月の洩る影は 人の心をとむるなりけり山家集 下 雑 1126
136影薄み松の絶え間を洩り来つつ 心ぼそしや三日月の空山家集 下 雑 1151
137さし来つる窓の入日をあらためて 光をかふる夕月夜かな山家集 下 雑 1153
138忌むといひて影に当らぬ今宵しも われて月見る名や立ちぬらん山家集 下 雑 1154
139こととなく君恋ひわたる橋の上に 争ふものは月の影のみ山家集 下 雑 1157
140思ひやる心は見えで橋の上にあらそひけりな月の影のみ山家集 下 雑 1158
141行く末の名にや流れん常よりも 月澄みわたる白川の水山家集 下 雑 1188
142山深み真木の葉分くる月影は はげしき物のすごき成けり山家集 下 雑 1199
143ひとりすむ朧の清水友とては 月をぞすます大原の里山家集 下 雑 1209
144かかる世に 影も変はらず澄む月を 見る我が身さへ恨めしきかな山家集 下 雑 1227
145曇りなき山にて海の月見れば 島ぞ氷の絶え間なりける山家集 下 雑 1356
146花と見る梢の雪に月さえて たとへん方もなき心地する山家集 下 雑 1362
147岩に堰く閼伽井の水のわりなきに 心澄めとも宿る月哉山家集 下 雑 1368
148月の澄む御祖河原に霜さえて 千鳥遠立つ声聞ゆなり山家集 下 雑 1402
149立ちのぼる月のあたりに雲消えて 光重ぬる七越の峯山家集 下 雑 1403
150敷きわたす月の氷を疑ひて篊の手まはるあぢの村鳥山家集 下 雑 1404
151ながめをりて月の影にぞ世をば見る 住も住まぬもさ成りけりよは山家集 下 雑 1406
152雲晴れて身に愁へなき人のみぞ さやかに月の影は見るべき山家集 下 雑 1407
153さのみやは袂に影を宿すべき 弱し心よ月なながめそ山家集 下 雑 1408
154月に恥ぢてさし出られぬ心かな ながむる袖に影の宿れば山家集 下 雑 1409
155心をば見る人ごとに苦しめて 何かは月のとりどころなる山家集 下 雑 1410
156露けさは憂き身の袖の癖なるを 月見る咎におほせつるかな山家集 下 雑 1411
157ながめ来て月いかばかり偲ばれん この世し雲の外になりなば山家集 下 雑 1412
158いつかわれこの世の空を隔たらん あはれあはれと月を思ひて山家集 下 雑 1413
159深く入は月ゆえとしもなきものを 憂き世忍ばんみ吉野の山山家集 下 雑 1422
160ほととぎす月の傾く山の端に 出でつる声の帰り入るかな山家集 百首 郭公十首 1472
161伊勢島や月の光のさひか浦は明石には似ぬ影ぞ澄みける山家集 百首 月十首 1473
162池水に底清く澄む月影は 波に氷を敷きわたすかな山家集 百首 月十首 1474
163月を見て明石の浦を出る舟は 波のよるとや思はざるらん山家集 百首 月十首 1475
164離れたる白良(しらら)の浜の沖の石を砕かで洗ふ月の白波山家集 百首 月十首 1476
165思ひときけば千里の影も数ならず 至らぬ隈も月にあらせじ山家集 百首 月十首 1477
166大方の秋をば月に包ませて 吹ほころばす風の音哉山家集 百首 月十首 1478
167何事かこの世に経たる思ひ出を 問へかし人に月を教へん山家集 百首 月十首 1479
168思ひ知るを世には隈なき影ならず わが目に曇る月の光は山家集 百首 月十首 1480
169憂き世とも思ひ通さじおしかへし 月の澄みける久方の空山家集 百首 月十首 1481
170月の夜や友とをなりていづくにも 人知らざらん住みか教へよ山家集 百首 月十首 1482
171月を憂しとながめながらも思ふかな その夜ばかりの影とやは見し山家集 百首 恋十首 1500
172月にいかで昔のことを語らせて 影に添ひつつ立も離れじ山家集 百首 述懐十首 1505
173憂き世とし思はでも身の過ぎにける 月の影にもなづさはりつつ山家集 百首 述懐十首 1506
174初春をくまなく照らす影を見て 月に先知る御裳濯(みもすそ)の岸山家集 百首 御裳濯二首 1531
175月をこそながめば心うかれ出め 闇なる空にただよふやなぞ山家集 百首 雑十首 1550
176天の原雲吹き払ふ風なくは出ででややまむ山の端の月聞書集 方便品 2
177思ひあれや望(もち)に一夜(ひとよ)の影を添へて鷲の御山に月の入りける聞書集 8
178櫂なくて浮かぶ世もなき身ならまし月の御舟の法なかりせば聞書集 宝塔品 12
179深き山に心の月し澄みぬれば 鏡に四方の悟りをぞ見る聞書集 安楽行品 15
180分け入りし雪の深山のつもりには いちしるかりし有明の月聞書集 寿量品 17
181花を分くる峰の朝日の影はやがて 有明の月を磨くなりけり聞書集 薬王品 24
182我心さやけき影に澄むものを ある夜の月を一つ見るだに聞書集 妙音品 25
183さみだれの雲重なれる空晴れて山ほととぎす月に鳴くなり聞書集 月前郭公 85
184足引のおなじ山より出づれども 秋の名を得て澄める月かな聞書集 秋 87
185あはれなる心の奥を尋(と)めゆけば月ぞ思ひの根にはなりける聞書集 秋 88
186秋の夜の月の光の影更けて裾野の原に牡鹿鳴くなり聞書集 秋 89
187葎(むぐら)敷く庵の庭の夕露を玉にもてなす秋の夜の月聞書集 秋 90
188憂き世とて月澄まずなることもあらばいかにかすべき天のまし人聞書集 秋 91
189月宿る波のかひには夜ぞなき明けて二見を見る心地して聞書集 秋 92
190更けにける我身の影を思ふまに 遥かに月の傾きにける聞書集 秋 98
191今宵しも月の隠るる浮雲や 昔の空の煙なるらむ聞書集 秋 105
192あはれいかに豊かに月をながむらむ八十島廻る海人の釣舟聞書集 秋 125
193千鳥鳴く吹飯の潟を見わたせば月影さびし難波津の浦聞書集 秋 126
194惜しみおきしかかる御法は聞かざりき 鷲の高嶺の月は見しかど聞書集 秋 140
195雲覆ふ二上山の月影は心に澄むや見るにはあるらむ聞書集 論文 141
196分け入ればやがて悟りぞ現はるる 月の影敷く雪の白山聞書集 論文 142
197夜もすがら明石の浦の波の上に 影畳みおく秋の夜の月聞書集  158
198いにしへの形見にならば秋の月 さし入る影を宿に留めよ聞書集  159
199難波江の岸に磯馴れて這う松を音せで洗ふ月の白波聞書集  160
200さりともなあか月ごとの憐れみに深き闇をも出でざらめやは聞書集  221

こころの月百景


花散らで 月は曇らぬよなりせば ものを思わぬ わが身ならまし山家集 上 春 72
願はくは花のしたにて春死なむ その如月の望月のころ山家集 上 春 77
雲にまがふ花の下にてながむれば 朧(おぼろ)に月は見ゆるなりける山家集 上 春 90
雪と見えて風に桜の乱るれば 花の笠きる春の夜の月山家集 上 春 126
庵にもる月の影こそさびしけれ 山田は引板(ひた)の音ばかりして山家集 上 秋 303
天の原 月たけのぼる雲路をば わきても風のふきはらはなん山家集 上 秋 307
月ならで さし入る影のなきままに 暮るるうれしき秋の山里山家集 上 秋 318
くまもなき 月の光にさそはれて 幾雲居までゆく心ぞ山家集 上 秋 月前遠望327
誰来なん 月の光にさそはれてと 思ふに夜半の明けぬなるかな山家集 上 秋 328
10秋はただ今夜一夜(こよひひとよ)の名なりけり 同じ雲居に月はすめども山家集 上 秋 334
11いづくとて あはれならずはなけれども 荒れたる宿ぞ月はさびしき山家集 上 秋 340
12身にしみて あはれ知らせる風よりも 月にぞ秋の色はありける山家集 上 秋 342
13木の間洩る 有明の月を眺むれば さびしさ添ふる峰の松風山家集 上 秋 345
14月をみて 心浮かれしいにしへの 秋にもさらにめぐりあひぬる山家集 上 秋 349
15夜もすがら 月こそ袖に宿りけれ 昔の秋を思ひ出づれば山家集 上 秋 351
16行方なく 月に心の澄み澄みて 果てはいかにかならむとすらむ山家集 上 秋 353
17影さえて まことに月のあかき夜は 心も空に浮かれてぞすむ山家集 上 秋 365
18もろともに 影をならぶる人もあれや 月の洩りくる笹の庵に山家集 上 秋 369
19くまもなき 月の光を眺むれば まづをばすての山ぞ恋しき山家集 上 秋 375
20雲きゆる 那智の高嶺に月たけて 光を貫ける滝の白糸山家集 上 秋 382
21世の中の 憂きをも知らですむ月の 影はわが身の心地こそすれ山家集 上 秋 401
22さらぬだに 浮かれてものをおもふ身の 心をさそふ秋の夜の月山家集 上 秋 404
23あながちに 山にのみすむ心かな 誰かは月の入るを惜しまむ山家集 上 秋 406
24飽かずのみ 都にて見し影よりも 旅こそ月はあはれなりけれ山家集 上 秋 411
25見しままに 姿も影も変わらねば 月ぞ都の形見なりける山家集 上 秋 412
26もろともに 旅なる空に月も出て すめばや影のあはれなるらむ山家集 上 秋 415
27都にて 月をあはれと思ひしは 数よりほかのすさびなりけり山家集 上 秋 418
28旅寝する 草の枕に霜さえて 有明の月の影ぞ待たるる山家集 上 冬 516
29冬枯れの すさまじげなる山里に 月のすむこそあはれなりけれ山家集 上 冬 517
30花におく 露に宿りし影よりも 枯野の月はあはれなりけり山家集 上 冬 519
31氷しく 沼の葦原風さえて 月も光ぞさびしかりける山家集 上 冬 520
32霜さゆる 庭の木の葉を踏み分けて 月は見るやととふ人もがな山家集 上 冬 521
33冴ゆと見えて 冬深くなる月影は 水なき庭に氷をぞ敷く山家集 上 冬 522
34木の間洩る月の影とも身ゆるかなはだらに降れる庭の白雪山家集 上 冬 526
35限りあらん雲こそあらめ炭竃のけぶりに月のすすけぬる哉山家集 上 冬 547
36千鳥鳴く絵島の裏に澄む月を 波に映して見る今宵かな山家集 上 冬 553
37月待つといひなされつる宵の間の 心の色を袖に見えぬる山家集 中 恋 616
38知らざりき雲井のよそに見し月の影を袂に宿すべしとは山家集 中 恋 617
39あはれとも見る人あらば思はなん月の面(おもて)に宿す心を山家集 中 恋 618
40月見ればいでやと世のみ思ほえて 持たりにくくもなる心かな山家集 中 恋 619
41弓張の月にはづれて見し影のやさしかりしはいつか忘(わすれ)ん山家集 中 恋 620
42面影の忘わるまじき別(わかれ)かな 名残を人の月に留めて山家集 中 恋 621
43秋の夜の月や涙をかこつらん 雲なき影をもてやつすとて山家集 中 恋 622
44天の原さゆるみ空は晴れながら 涙ぞ月の雲になりける山家集 中 恋 623
45もの思ふ心のたけぞ知られぬる 夜な夜な月をながめ明かして山家集 中 恋 624
46月を見る心のふしを咎にして 便りえがほに濡るる袖哉山家集 中 恋 625
47思ひ出づることはいつともいひながら 月には堪えぬ心なりけり山家集 中 恋 626
48足引の山のあなたに君住まば入るとも月を惜しまざらまし山家集 中 恋 627
49嘆けとて月やはものを思はする かこちがほなる我が涙かな山家集 中 恋 628
50君にいかで月にあらそふ程ばかり めぎり逢ひつつ影を並べん山家集 中 恋 629
51白妙の衣重ぬる月影のさゆる真袖にかかる白雲山家集 中 恋 630
52忍び音の涙たたふる袖のうらに なづまず宿る秋の夜の月山家集 中 恋 631
53もの思ふ袖にも月は宿りけり 濁らで澄める水ならねども山家集 中 恋 632
54恋しさをもよほす月の影ならば こぼれかかりてかこつ涙か山家集 中 恋 633
55よしさらば涙の池に袖馴れて心のままに月を宿さん山家集 中 恋 634
56うち絶えて嘆く涙に我袖の朽ちなば何に月を宿さん山家集 中 恋 635
57世々経とも忘れ形見の思ひ出は 袂に月の宿るばかりか山家集 中 恋 636
58涙ゆえくまなき月ぞ曇りぬる天のはらはらとのみ泣かれて山家集 中 恋 637
59あやにくにしるくも月の宿るかな 夜にまぎれてと思ふ袂に山家集 中 恋 638
60面影に君が姿を見つるより にはかに月の曇りぬる哉山家集 中 恋 639
61夜もすがら月を見がほにもてなして 心の闇にまよふ比(ころ)かな山家集 中 恋 640
62秋の月もの思ふ人のためとてや憂き面影に添へて出づらん山家集 中 恋 641
63隔てたる人の心のくまにより 月をさやかに見えぬがかなしさ山家集 中 恋 642
64涙ゆえ常は曇れる月なれば 流れぬ折ぞ晴れ間なりける山家集 中 恋 643
65くまもなく折しも人を思ひ出でて心と月をやつしつるかな山家集 中 恋 644
66物思ふ心のくまをのごひうてて 曇らぬ月を見るよしも哉山家集 中 恋 645
67恋しさや思ひよわるとながむれば いとど心をくだく月影山家集 中 恋 646
68ともすれば月澄む空にあくがるる 心のはてを知るよしもがな山家集 中 恋 647
69ながむるに慰むことはなけれども 月を友にて明かす此哉(ころかな)山家集 中 恋 648
70物思ひてながむる頃の月の色に いかばかりなるあはれそむらん山家集 中 恋 649
71雨雲のわりなき隙を洩る月の影ばかりだに逢ひ見てし哉山家集 中 恋 650
72秋の月信太の杜の千枝よりもしげき嘆きやくまなかるらん山家集 中 恋 651
73世の中に住まぬもよしや秋の月 濁れる水の湛ふさかりに山家集 中 雑 720
74月のみや上の空なる形見にて 思ひも出でば心通はん山家集 中 雑 727
75夜もすがら月をながめて契りおきしそのむつごとに闇は晴れにき山家集 中 雑 733
76世を捨てて谷底に住む人見よと峰の木の間を分る月影山家集 中 雑 754
77月を見ていづれの年の秋までか この世にわれが契りあるらん山家集 中 雑 773
78いかでわれ今宵の月を身に添えて 死出の山路の人を照らさん山家集 中 雑 774
79鳥部野や鷲の高嶺の末ならん けぶりを分て出づる月影山家集 中 雑 776
80もろともにながめながめて秋の月 ひとりになるらんことぞかなしき山家集 中 雑 778
81今宵君死出の山路の月を見て雲の上をや思ひ出づらん山家集 中 雑 792
82隠れにし君が御蔭の恋しさに月に向ひて音をや泣くらん山家集 中 雑 793
83わが君の光隠れし夕より闇にぞ迷ふ月は澄めども山家集 中 雑 794
84いとどいかに西へ傾く月影を常よりもけに君慕ふらん山家集 中 雑 853
85西へ行しるべと頼む月影の空頼めこそかひなかりけれ山家集 中 雑 854
86さし入らで雲路をよしき月影は待たぬ心ぞ空に見えける山家集 中 雑 855
87朝日待つほどは闇にや迷はまし 有明の月の影なかりせば山家集 中 雑 868
88山端に隠るる月をながむればわれと心の西に入るかな山家集 中 雑 870
89西へ行月をやよそに思ふらん心に入らぬ人のためには山家集 中 雑 872
90闇晴れて心の空に澄む月は 西の山辺や近くなるらん山家集 中 雑 876
91雨雲の晴るるみ空の月影に恨みなぐさむ姨捨の山山家集 中 雑 886
92いかにして恨みし袖に宿りけん 出でがたく見し有明の月山家集 中 雑 887
93鷲の山月を入りぬと見る人は 暗きに迷ふ心なりけり山家集 中 雑 888
94悟り得し心の月の顕れて 鷲の高嶺に澄むにぞ有ける山家集 中 雑 889
95雲晴るる鷲のみ山の月影を 心澄みてや君ながむらん山家集 中 雑 890
96鷲の山誰かは月を見ざるべき心にかかる雲し晴れなば山家集 中 雑 891
97鷲の山暗からぬ峰なればあたりを払ふ有明の月山家集 中 雑 895
98濁りたる心の水の少きに何かは月の影やどるべき山家集 中 雑 903
99いかでわれ清く曇らぬ身になりて心の月の影をみがかん山家集 中 雑 904
100鶉(うずら)伏す刈田のひつち生ひ出でて ほのかに照らす三日月の影山家集 中 雑 945
 

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深夜1時半ころ、もう寝ようと思って2階へ行ったら、
北側の窓が異様に明るく輝いていました。
はたして街路灯がこんな方にあったかと窓を開けて確認してみたら・・・・

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お月さんの明かりでした。


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しばらくは花の上なる月夜かな   芭蕉

(写真は夜ではありませんが) 

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矢瀬親水公園。後ろは見城山。

東京や高崎、前橋など、都会の桜はもう散りましたが、ここ月夜野は今が盛りです。



世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし 

と言いますが、これから見られる利根地方の桜は、
素敵な一本桜が 多く、提灯の下での宴会花見などはあまりないのがよいところです。


今日は、まちづくりの会議で手づくり行灯による
「月夜野百八燈」の提案を相談させていただきました。



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本日は、上弦の月です。


上弦と下弦の月の見分け方
http://park.geocities.jp/akanesumire0705/hangetsu.htm
 

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梅の花がようやく咲き始めて

桜の開花のたよりが聞こえ始めたかと思うと、

この月夜野では

梅に、桜に、桃に春の花が一斉に咲き出します。

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山の雪もだいぶ融けたかと思いきや、
まだ谷川岳には、時々雪が降ります。

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京都左京区にある吉田神社のある吉田山を歌った三高寮歌を
梅原猛の本で見ました。
ちょうどこのような情景です。


紅萌(くれないも)ゆる岡の花
早緑(さみどり)匂う岸の色
都の花に嘘(うそぶ)けば
月こそかかれ吉田山



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昼は花々があわただしく咲いているのに、
このところ夜は月が細いこともあり、
見えることが少ない日が続きました。


今日もなかばあきらめていたところ・・・


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まそ鏡 照るべき月を 白栲(しろたえ)の 雲か隠せる 天つ霧かも
             (万葉7−雑歌1079)
 
(もう月が出てもよさそうなのに、雲が隠しているのだろうか。
それとも空に霧がかかっているのだろうか)


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ところで、体力仕事のあとは無条件に一杯のビールが救ってくれるけれども、
うまい日本酒は、心に余裕がないとなかなかおいしくは飲めないものだ。


こころの月百景



月花の愚に針たてん寒の入
月待や梅かたげ行小山ぶし
春もややけしきととのふ月と梅
猫の恋やむとき閨の朧月
しばらくは花の上なる月夜かな
風月の財も離よ深見草
五月雨に御物遠や月の顔
夏の月ごゆより出て赤坂や
月はあれど留主のやう也須磨の夏
10月見ても物たらはずや須磨の夏
11蛸壷やはかなき夢を夏の月
12手をうてば木魂に明る夏の月
13一家(ひとつや)に遊女もねたり萩と月
14芭蕉葉を柱にかけん庵の月
15あけゆくや二十七夜も三かの月
16三ヶ月や朝顔の夕べつぼむらん
17何事の見たてにも似ず三かの月
18三日月や地は朧なる蕎麦畠
19みしやその七日は墓の三日の月
20月ぞしるべこなたへ入せ旅の宿
21影は天(あめ)の下てる姫か月のかほ
22見る影やまだ片なりも宵月夜
23詠(ながむ)るや江戸にはまれな山の月
24実(げに)や月間口千金の通り町(ちょう)
25侘テすめ月侘斎がなら茶歌
26武蔵野の月の若ばへや松島種
27馬に寝て残夢月遠し茶のけぶり
28みそか月なし千とせの杉を抱あらし
29月はやし梢は雨を持ながら
30あの中に蒔絵書きたし宿の月
31月影や四門四宗も只一(ただひとつ)
32其玉(そのたま)や羽黒にかへす法(のり)の月
33月に名を包みかねてやいもの神
34義仲の寝覚の山か月かなし
35中山や越路も月はまた命
36国ぐにの八景更に気比の月
37月清し遊行のもてる砂の上
38月いづく鐘は沈める海の底
39月のみか雨に相撲もなかりけり
40ふるき名の角鹿(つぬが)や恋し秋の月
41衣着て小貝拾はんいろの月
42そのままよ月もたのまじ息吹やま
43月さびよ明智が妻の咄しせん
44月しろや膝に手を置宵の宿
45柴の戸の月や其ままあみだ坊
46名月はふたつ過ても瀬田の月
47入(いる)月の跡は机の四隅哉
48月澄や狐こはがる児(ちご)の供
49わが宿は四角な影を窓の月
50たんだすめ住ば都ぞけふの月
51かつら男すまずなりけり雨の月
52けふの今宵寝る時もなき月見哉
53命こそ芋種よ又今日の月
54今宵の月麿(とぎ)出せ人見出雲神
55木をきりて本口みるやけふの月
56蒼海の浪酒臭しけふの月
57名月の月に深川の酒薄シ
58月十四日今宵三十九の童部(わらべ)
59雲おりおり人を休める月見哉
60盃にみつの名をのむこよひかな
61名月や池をめぐりて夜もすがら
62寺に寝てまこと顔なる月見哉
63俤(おもかげ)や姥ひとりなく月の友
64明月の出るや五十一ヶ条
65名月の見所問ん旅寝せむ
66あさむつや月見の旅の明ばなれ
67月見せよ玉江の蘆をからぬ先
68あすの月雨占なはんひなが嶽
69名月や北国日和定めなき
70月見する座にうつくしき顔もなし
71来くるる友を今宵の月の客
72三井寺の門にたたかばけふの月
73名月や門に指くる潮頭
74川上とこの川しもや月の友
75夏かけて名月あつきすずみ哉
76名月の麓の霧や田のくもり
77名月の花かと見えて綿畠
78今宵誰よし野の月も十六里
79座頭かと人に見られて月見哉
80名月の夜やおもおもと茶臼山
81いざよひもまださらしなの郡哉
82やすやすと出ていざよふ月の雲
83十六夜や海老煎る程の宵の闇
84鎖(ぢやう)あけて月さし入よ浮み堂
85十六夜はわづかに闇の初(はじめ)哉
86賤(しづ)の子やいねすりかけて月をみる
87いもの葉や月待里の焼ばたけ
88菊に出てな良(ら)と難波は宵月夜
89かくれ家や月と菊とに田三反
90よめはつらき茄子(なすび)かるるや豆名月
91夜ルヒソカ二虫は月下の栗を穿ツ
92木曽の痩もまだなをらぬに後の月
93九たび起ても月の七ツ哉
94橋桁のしのぶは月の名残哉
95桝買て分別かはる月見かな
96秋もはやばらつく雨に月の形(なり)
97月の鏡小春にみるや目正月
98雪と雪今宵師走の名月か
99月白き師走は子路が寝覚哉
100たび寝よし宿は師走の夕月夜
101月雪とのさばりけらし年の暮
102冬庭や月もいとなるむしの吟
103月やその鉢木(はちのき)の日のした面

月ぞしるべこなたへ入らせ旅の宿


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おしなべて花の盛りになりにけり

      山の端ごとにかかる白雲

                (西行 山家集 春64)


花を雲に見立てた伝統的表現です。





あんな山の上にも、と
ところどころにこの季節にだけ、
桜の木が特別な名所でもなく、たくさんあることがわかります。




岩戸開けし天つ尊のそのかみに

        桜を誰か植えはじめけん

(天照大神が天の岩戸を開けたとき、桜はすでにあったという。
そんな昔に一体誰が最初に植えたのだろう。)


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雲にまがう花のしたにてながむれば
       おぼろに月は見ゆるなりけり
              (山家集 90)

かかる白雲を花の下からみた西行の歌。




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群馬県も北に行くほど、花の季節と春まだ降る雪、
それと山にかかる雲が混在同居します。

いま降ってくる白い物が、桜の花びらか雪かわからぬほど
風流な季節がここでは味わえるのです。


「月夜野百景」のホームページ紹介用の枝折をかねてから作ろうと思っていましたが、このたびようやく道元の歌から月にかかわる歌4首を選んで作成しました。



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下の横向きにおいた枝折は裏面です。





         春は花夏ほととぎす秋は月
     冬雪さえてすずしかりけり

  川端康成がノーベル文学賞を授与された直後、「美しい日本の私」と題する受賞記念講演をし、その冒頭に朗吟して広く知られたとも言われる有名な歌です。

 ですが、これを道元の月の歌の代表とするには少し無理があります。これは月の歌というよりは、すがすがしく自然と一体になる心を詠んだ歌ですから。
 それでも、道元を代表する歌でもあるので、外すわけにはいきません。

 妻も私も、この歌を大きな心の糧にしています。
 家の障子にも貼付けています。 

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実際にはいつも「雪さえてすずしかりけり」というものの、
相当見栄をはらないと寒さには勝てないものです。


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山の端のほのめくよひの月かげに
       光もうすくとぶ螢かな


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これぞ「ホタル祭り」や「指月会」を行っている月夜野の空間にぴったりの歌。

「ほのめくよひの月かげ」や「光もうすくとぶ螢」を追う繊細な感覚が、この言葉で意識されれば、ホタルの飛ぶ数や明かりの量ばかりに囚われない、より自然に近づく感覚が、多くの人に伝わることと思います。



 新古今の時代になって歌人たちは、瞳を凝らしてホタルの細い光を追い、その感興をうたいはじめました。

軒しろき月のひかりに山かげの
            闇をしたひてゆく螢かな
                            宮内卿

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大空に心の月をながむるも
      闇に迷ひて色にめでけり



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 「闇に迷ひて色にめでけり」がちょっとわかりにくいかもしれませんが、大事なところなので、松本章男『道元の和歌』(中公新書)の解説を以下に紹介します。

 わたしたちは意識を透徹させたところに、月を水のように心に宿すことができる。
 そういう状態のとき、大空にある月と心にある月とは同一の実態であって、月とはわたしたちの意識そのものであるということが実感される。
 ところが一方で、何かの拍子に、わたしたちは色・声・香・味・触の「五欲」に執着して物を見、煩悩の闇に迷いがちなのだ。
 そして、事物の表面にあらわれている美しさのみに目をうばわれることを、「色にめでる」という。 

 一首では「ながむる」の語にも留意しなければならない。
 現代の日本語では、外なる事物を対象として見わたすことを「眺める」といい、「眺む」の意味が失われてきている。「眺む」のほんらいの意味は、事物を対象としては見ず、事物に視線をあてているものの、じつは心の中をかえりみているところにある。だから、「大空に」月を「ながむる」ということは、夜空を見あげているが、心に月を宿すことにほかならない。 

 月と自己とは「見る・見られる」という関係にあるのではない。それを五欲にまどわされて、大空の月を、心に宿すことなくただ大空の月として愛でてしまったことがあった。これでは仏の実体をも覚ることはできない。仏を知るとはいえない。道元は一首でそういう自戒をしている。
 




 ここでこの一首をもう一度、味わってみましょう。
    大空に心の月をながむるも
              闇に迷ひて色にめでけり




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濁りなき心の水にすむ月は
     波もくだけて光とぞなる

       
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 「あかあかや、あかあかあかや〜」の月を詠った明恵も同じ心境を「わが身は暗きところにて見やりたれば、澄めるこころ月のひかりにまぎるる心地すれば」と詞書して、こう詠んでいます。

くまもなく澄める心のかがやけば
          わが光とや月おもふらむ




この流れは、月の表現は消えますが、良寛の次の歌で極まります。




濁る世を 澄めともよはず わがなりに
          澄まして見する 
谷川の水






これは、利根川源流のみなかみ町としても大切にしたい歌です。

こころの月百景





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