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駐車場から徒歩30分足らずで、
これほどの素晴らしい空間にたどり着くとは思いもよりませんでした。

 大峰山は、日本海側の植生と太平洋側の植生が接する地域であり、両者の植物相が見られる貴重な場所。イヌブナなどの太平洋側に特徴的な植物に混じって、ハイイヌガヤやブナなどが見られます。

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湖畔の看板より (通行止区間の表示は私の画像書き込みです)

これほどの美しい景観が意外と注目されていないのは、多くの人が大峰山登山の中継地としてキャンプ地のある沼の北側を通過するだけで、沼の東側から西の斜面を見る側にまでまわる人が少ないからかもしれません。

 またこのような場所が、すぐ近くまで杉などの経済林がある里のすぐそばにあり、保存され続けてきたことはとても重要なことです。


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美しい湖沼の姿を見せてくれる場所として群馬県には、
ほかに尾瀬沼をはじめ覚満淵、榛名湖、丸沼、菅沼など沢山ありますが、
これほど水鏡に映る紅葉の美しい場所は、なかなかありません。


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大峰沼は、鏡池という呼称で呼ばれていないことが不思議なほどです。

(沼の長径は300m、短径は150mほど)



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さらに、この大峰沼の素晴らしい点は、
湖畔を手軽に周遊(現在は一部通行止め区間があります)できることです。

沼の西側はミズナラが主となった樹林でおおわれ、
他の三方はカラマツが多い。
またこの周辺はカエデやシデの種類が豊富で、
イタヤカエデやミネカエデ、ウリカエデなどのほか、
ヒトツバカエデやチドリノキ、メグスリノキなどもあるようです。


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樹木図鑑、葉っぱ図鑑は必携!

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太陽の光を背に受けて向かい側の山の紅葉を水鏡に見るとき、
また、対岸にまわり逆光に光る湖面を見るなど、
一歩、歩を進めるごとに足を止めて見惚れてしまうほど
変化にとんだ光景を目にすることができます。


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私たちが各地の有名な絶景空間を訪ねても、
ひとつの場所をじっくり味わうことは意外と少ないものです。

せいぜい昼食を兼ねた場所で1時間くらい過ごすのが良いところではないでしょうか。


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この大峰沼は、湖畔を周遊していると、
気づかぬうちに2時間、3時間と時がすぎてしまいます。



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なかでも本州最大、最古級の浮島は大きいもので約150mほどにも及びます。

この浮島には厚い泥炭層が発達しており、最も厚いところは9mにも及び、
その厚みには1万年近い過去の歴史が秘められています。
この堆積物には、浅間山や榛名山を給源とする軽石層が何層か入っており、
これによって堆積したおよその年代がわかったようです。

沼の水が多いときには上層の1mほどの泥炭層が、下層から切れて大きな浮島になりますが、
秋になり沼の水が少なくなると上層は沈み、
下層と接して浮島ではなくなるとのこと。


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また水鏡を通じて見る世界は、
水面の下を想像させるだけでなく、
遠い昔への入り口。
異界への入り口のようでも。

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周遊して四方から見ていると
太古から悠久の時の積み重ねに
自ずと想像力をかき立てられます。

事実、ここに積み重ねられた時間は、
はじめに沼の中に沈水植物群落ができ、沼が浅くなるにつれて、
てい水植物、浮葉植物の群落がふえて、ついには沼をうずめて湿原になる。
その湿原が乾燥すると低木が侵入し、やがては高木の時代になり森林に変わる
長い変遷の歴史を想像することができます。


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湖畔の看板より (通行止区間の表示は私の画像書き込みです)



 水面の大部分は、 ジュンサイ・ヒツジグサ・ヒルムシロなどの浮葉植物におおわれ、水中には、エビモやフサモ・タヌキモなどの沈水植物が生育。

 なかでもジュンサイは古い沼にあるのが特徴で、事実、大峰沼にも古くからの伝説が伝わっています。

 浮島部分は典型的な高層湿原で、ほぼ全域ヨシの群落でおおわれ、イボミズゴケをはじめモウセンゴケ・ワタスゲ・ツルコケモモが見られます。


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ただ多くの史跡や名所を訪ね、
より多くの山の頂を極めたりすることも楽しいものですが、

たったひとつの空間から、このようにより多くのものを見て、
より多くのことを感じられることは、とても素敵なことです。


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確かにここは、谷合の沼という閉じた空間なので、
高い山から広大な自然を見渡すような景観ではありません。

でも、それだからこそ
この独自の空間の自然に没頭、集中して
時の変化を楽しむことができます。


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そんな場所を地元の人たちは、
幼い頃から遠足などで親しみ、
数々の思い出も積み重ねて育ってきています。


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実際には、運よく岸から離れて浮いていたことで
安易に人が立ち入ることなく守り続けることができたこの貴重な浮島です。

過去には、この浮島を見るためにイカダを浮かべようとか、
橋をかけようとかの話も地元で出たこともあったようです。

ときどきクマやヤマビルの存在が、
さらに安易な立ち入りを阻むような場所でもありますが、
これからも、この貴重な自然を守り続けていきたいものです。


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ときには、このような大きなクマの糞も・・・


しかも、ここは主要駅から車で10分、15分。
駐車場から徒歩で2、30分の緩やかな登り道でたどり着ける
すぐそこにある場所です。
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これほど身近な場所で、
奥深い自然を満喫できる場所は、なかなかありません。




新緑の春

モリアオガエルの初夏

紅葉の秋

雪に埋もれ、靄たちこめる冬



いつでもすぐそばに、
時を忘れる大自然の異空間がここにあります。


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紅葉の見頃は11月上旬
ヤマビルの心配のない気温の下がった紅葉シーズンから冬の積雪期にかけてが、
じっくりと散策する季節としてはおすすめです。

残念ながら、登山口駐車場の半分以上は、いつも県外ナンバー。


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参考文献
野村哲 編著 『群馬の自然をたずねて(日曜の地学 5)』築地書館
堀正一 『上毛の自然 ー植物を中心にー』 みやま文庫