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月齢 20.1


日本画で満月以外の月のかたちというと、
なぜか下弦の月から少し膨らんだこの形がよく使われます。

日本画特有のモチーフで、いわゆるボヨヨンの月です。

かつて春の季節以外のおぼろ月(霞んだ月)のことを
ボヨヨンの月と呼ばせていただくことを紹介しましたが、
もう一つ、半月よりも少し膨らんだ月、
もしくは満月に少しかける月のことも
ボヨヨンの月と言います。

そこで、これからはこの二つを区別するために、
春のおぼろ月以外の朧月を、ボヨヨンの月 - α(アルファ)と言います。

霞んだ月を意味するボヨヨンの月 - α は、
月のかたちというよりも、むしろ状態をさすもので、
天候・気象状況で霞むことの他に、そうした条件と連動した心情もあらわします。

たとえば、謡曲に
地 「月こそ出づれ朝日山、山吹の瀬に影見えて、
雪さしくだす島小舟、山も、川も、
おぼろおぼろとして是非を分かぬ景色かな・・・」
         頼政


このような春の朧月だけでない霞んだ心情を総してボヨヨンの月 - α とします

 
これに対して、半月よりも膨らんだ月のかたちのことを、
ボヨヨンの月 - β(ベータ)
と呼ばせていただきます。 

下のような日本画のモチーフが、ボヨヨンの月-β の典型です。
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大好きな俵屋宗達と本阿弥光悦コンビの作品
(「太陽 特集本阿弥光悦」昭和38年4月号表紙)


加藤周一によると、
絵画の余白に文字を入れることはあっても、
絵の上に文字を重ねるというのは、
世界の美術の中でもこの二人が開拓した以外には例がないようです。

絵の中に文字(詩文)を入れるのは中国絵画に多く見られますが、
それも書き込んでいるのは絵の余白部分です。

現代の雑誌やポスターの印刷デザインでは、
当たり前のようにやっていることですが、
文字=書を下絵の上に変幻自在に配置する妙は、
光悦には遠く及びません。
 
このようなボヨヨンの月-βは、月の造形としては少し不自然なかたちです。
日本画のモチーフの中でのみ、このデフォルメは許されるかのようです。

日本の詩歌に重ねて使われる月の絵は、
そのまま形が暦を表すものであるだけに、
そこで使われる形状は現代人の想像以上に正確であるはずです。

にもかかわらず、日本画の世界では、
虎や象の絵画と同じように、師匠の型を模すことが基本であることから、
このような形状が継承されているのかもしれません。


あまり分類にこだわる必要はないかと思いますが、
私たちは、春のおぼろ月と区別して
便宜上、ボヨヨンの月のαとβを使わせていただくことにしますw




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