もしかしたら、春霞というと現代の人はスギ花粉の景色のことと思っているかもしれません。
確かに大地の温度が上がることに起因する諸々の現象なのですが、古来、スギ花粉やPM2.5など話題になるずっと前から春霞や朧月は味わい深い日本の春景色を代表するものでした。
そんな春の日の今日、仕事帰りに東の空を見たら絵に描いたような朧月が見えました。
確かに大地の温度が上がることに起因する諸々の現象なのですが、古来、スギ花粉やPM2.5など話題になるずっと前から春霞や朧月は味わい深い日本の春景色を代表するものでした。
そんな春の日の今日、仕事帰りに東の空を見たら絵に描いたような朧月が見えました。
毎度、写真の技術がなく、山にかかる美しい朧月を見たままに写し取ることはできませんでした。
朧月というと、まず源氏物語の花宴に出てくる魅惑的な女性「朧月」が思い出されます。
光源氏は、ふと出会った朧月のことが忘れられず、その姿を探し求めます。
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の
朧月夜に似るものぞなき
光源氏は、ふと出会った朧月のことが忘れられず、その姿を探し求めます。
照りもせず曇りもはてぬ春の夜の
朧月夜に似るものぞなき
なかなか姿が見れない、素性もつかめない
やがて朧月に再会する機会が訪れますが、 なかなか出会えないことを愚痴る光源氏を
朧月は男の軟弱さとしてズバッと斬り込みます。
真剣に私のことを思うなら、どこにいようが私を見つけ出してこそその気があると言えるのでしょう。
それができないのなら、私に気はないと言っているのと同じよ。
そう言われてしまえば、男は返す言葉がありません。
わずかなやりとりですが、この朧月の女性としての魅力が文字の力だけで強く伝わってきます。
紫式部が、こんな表現を残してくれただけで、春に月を見上げる新たな楽しみをこれまでどれだけ多くの人に与えてくれたことでしょう。
世界に類を見ない古典文学の傑作「源氏物語」は、
与謝野晶子訳、谷崎潤一郎訳、田辺聖子訳、瀬戸内寂聴訳や
今泉忠義訳など多くの作家や研究者が挑戦していますが、
手っ取り早くスラスラ読むには、林望訳が好評です。
現在改訂祥伝社文庫版刊行中。
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