30年くらい前に出会い、
20年くらい前にようやく古書で購入し、
ずっと棚の肥やしになっていた本。
 
ようやく熟成して味わえる幸せ。



IMG_1266


芭蕉は渋滞せず、執着せず、山を出蔓の水の、茂林深谷の間を行き、
平野曠野の中を流れ、觸處に景をなして趣を變ずるが如く、
峰にかかる雲の暁天に紫を横たへ、夕陽に紅を暈して、
少時に態を換え観を異にするが如し。
 
春の日は冬の日に異なり、曠野は春の日に異なり、
ひさごはまた曠野に異なり、猿蓑はまたひさごに異なり、
炭俵また猿蓑に異なり、續猿蓑また炭俵に異なれるを看て知るべし。

猿蓑は好き集なり、されど猿蓑のみに芭蕉の眞 正體の籠れるが如くいふは、
却って芭蕉を累するのあやまりに墜ちん。