蛍といえば
「源氏物語」のこの場面。





蛍の光では、ほんのかすかにしか見えなかったが、姫君がすらりとした格好で、物に寄りかかっていらした容姿の美しかったのを、もっともっと見たくお思いになって、全く源氏の思わく通り、宮のお心に沁みこんだのだった。



蛍兵部卿宮
鳴く声も聞えぬ虫の思ひだに人の消つには消ゆる物かは

   鳴く声も聞こえない蛍の光だって、人が消そうとしても、消える物ではありません。
   まして音に泣くわたしの思いの火は、どうして消すことができましょうか。




わたしの心がお分かりになりましたか
とお申し上げになる。
こうした場合の御返歌をあれこれ考え廻して手間取るのも、素直でないように思われるから、早いだけを取りえにして



声はせで身をのみ焦す蛍こそいふよりまさる思ひなるらめ

    声を出さないで身を焦がしてばかりいる蛍の方が、あなた様のように、声に出しておっしゃるよりも、
   もっと切ない思いなのでしょう



例えばこんな風に、わざと何でもないように申し上げて、御自身は奥の方に引込んでおしまいになったので、いかにもよそよそしくお扱いになるのがつらいと、宮は随分お恨み申しあげなさる。